テレワーク時代のオフィスの役割とは?コロナ禍を経て私たちの働き方は大きく変化し、テレワークやABWはめずらしいものではなくなりました。しかし、オフィスはコロナ以前のままで、使いにくくなっているところも多く見られます。テレワークやABWが当たり前となった今、オフィスはどのようにあるべきなのでしょうか?テレワーク普及の背景テレワークとは、情報通信技術を活用し、時間や場所にとらわれずに働く形態を指します。従来から一部の企業で導入されていましたが、2020年以降のパンデミックを契機に、多くの企業がテレワークを導入するようになりました。これまでに政府もテレワークを推進する活動を行っており、「テレワーク・デイズ」などの取り組みを通じて、テレワークを積極的に推奨してきました。従来のオフィスの役割とテレワーク普及後の課題従来、オフィスは従業員が集まり、仕事をする場所としての役割が中心でした。しかし、テレワーク中心の働き方が浸透したことにより、この役割は薄れつつあります。オフィスを持たない企業も増え、従業員は自宅やコワーキングスペースなど、さまざまな場所で仕事をするようになりました。一方で、テレワーク中心の働き方の普及は新たな課題も生み出しました。コミュニケーション不足によるチームワーク力の低下や、孤独感によるメンタルヘルスの悪化、また、セキュリティ対策や労務管理など、テレワークならではの課題も浮き彫りになっています。テレワーク時代の働き方とオフィスの役割テレワーク時代の働き方は、従来の「オフィスに出社して仕事をする」というスタイルから、「時間や場所にとらわれずに働く」というスタイルへと変化しています。このような変化に対応するため、これからのオフィスは、単なる「仕事をする場所」ではなく、「コミュニケーションを促進する場所」「創造性を刺激する場所」「企業文化を醸成する場所」としての役割が求められるでしょう。有名企業のテレワーク対応のトレンド多くの有名企業が、テレワーク時代の新しい働き方を取り入れてきました。海外企業ではGoogleやFacebookなども従業員が自由に働ける環境を提供し、オフィスにはカフェやジムなどの設備が充実しています。日本国内でも、大企業を中心にテレワーク導入が推進されてきました。例えば、NTTグループは、2022年7月1日「リモートスタンダード制度」という、テレワークで働ける新制度を導入しています。また、富士通は、テレワークを活用した働き方「Work Life Shift」を提唱し、人事制度とオフィス環境整備の両面から様々な施策を推進しています。特にオフィス環境面では、従業員がそれぞれの業務目的に最も適した場所から自由に選択できるようにするとともに、全席をフリーアドレス化することによりオフィス規模の最適化を図ってきました。これらの企業の取り組みは、これからのオフィスの在り方について多くの示唆を与えてくれます。テレワーク時代のオフィスは、単なる「仕事をする場所」ではなく、組織運営の方針にしっかりマッチしたオフィスであることが必要になっています。 テレワークとオフィスワークのハイブリッドにするメリット新型コロナウイルス感染症の影響で、多くの企業がテレワークを導入し、働き方改革が進みました。しかし、実際にテレワークの導入が進む中で、テレワーク中心の働き方にもメリット・デメリットがあることが分かったため、昨今ではテレワークとオフィスワークを組み合わせたハイブリッドな働き方も注目されています。テレワークのメリットテレワークの主なメリットとしては、以下のようなものが考えられます。維持コスト削減オフィスワークでは、オフィススペースの賃料や光熱費、オフィス家具、OA機器などの設備投資が必要です。一方、テレワークとは、これらの費用を大幅に削減することができる働き方です。従業員が自宅やコワーキングスペースなど、各自の好きな場所で働くことができるため、オフィススペースを縮小したり、場合によってはオフィスを持たないという選択肢も可能です。優秀な人材の確保テレワークとは、地理的な制約を受けずに、全国各地、あるいは海外からも優秀な人材を採用できるというメリットを持っています。通勤時間を気にせず、自分のライフスタイルに合わせて働けるため、優秀な人材にとって魅力的な働き方と言えるでしょう。また、育児や介護など、家庭の事情を抱える人材にとっても、テレワークは働きやすい環境を提供します。通勤時間の削減・生産性向上テレワークとは、通勤時間がゼロになる働き方であるため、その削減した時間を有効活用することができます。睡眠時間を増やしたり、家族との時間を過ごしたり、自己啓発に励んだり、それぞれのライフスタイルに合わせて時間を自由に使うことができます。また、通勤によるストレスや疲労を軽減できるため、心身ともに健康な状態で仕事に取り組むことができ、結果として生産性の向上にも繋がります。柔軟な働き方の実現テレワークとは、時間や場所にとらわれない働き方です。子育て中の従業員は、子どもの送り迎えや急な病気にも対応しやすくなります。また、介護が必要な家族がいる従業員も、自宅で仕事をしながら介護をすることができます。さらに、個人の生活リズムに合わせて、集中できる時間帯に仕事をすることも可能です。このような柔軟な働き方は、従業員の満足度向上やワークライフバランスの改善に貢献します。テレワークのデメリットテレワークの主なデメリットとしては、以下のようなものが考えられます。コミュニケーション不足テレワークとは、対面でのコミュニケーションが減るため、チームメンバーとの意思疎通が難しくなる働き方でもあります。チャットツールやビデオ会議システムなど、オンラインでのコミュニケーションツールを活用することで、ある程度のコミュニケーションは可能ですが、対面でのコミュニケーションと比較すると、ニュアンスや感情が伝わりにくく、誤解が生じやすいという側面があります。また、雑談などの何気ない会話が減ることで、チームの連帯感や一体感が薄れてしまう可能性もあります。労務管理の難しさテレワークとは、従業員がそれぞれ異なる場所で働く働き方であるため、労働時間や休憩時間などを管理することが難しくなります。従業員が適切な労働時間を守っているか、休憩を適切に取っているかなどを把握することが困難な場合があります。また、従業員の健康状態やメンタルヘルスを把握することも難しく、適切なサポートを提供できない可能性もあります。セキュリティリスクテレワークとは、自宅やカフェなど、セキュリティが万全ではない場所で業務を行うことが多い働き方であるため、セキュリティリスクが高まる可能性もあります。社内ネットワークへの不正アクセスや情報漏洩、ウイルス感染などのリスクを低減するためには、セキュリティ対策を徹底する必要がありますが、テレワーク環境下では、セキュリティ管理が難しい場合があります。設備投資テレワークとは、オフィスへ出勤しない働き方であるため、導入するためには、従業員が自宅やリモート環境で快適に仕事ができるよう、PCやモニター、Webカメラ、ヘッドセットなどの設備が必要になる場合があります。オフィスワークのメリットオフィスワークの主なメリットとしては、以下のようなものが考えられます。コミュニケーションの円滑化オフィスという場では、対面でのコミュニケーションが容易に行うことができます。ちょっとした質問や相談、雑談なども気軽にできるため、チームメンバーとの意思疎通がスムーズになり、一体感や連帯感を醸成しやすくなります。また、表情や声のトーンなど、非言語的なコミュニケーションも伝わりやすいため、誤解が生じにくく、円滑な人間関係を構築することができます。孤独感の解消テレワークとは、「孤独感や孤立感を感じやすい」という課題を持つ働き方でもありますが、オフィスワークでは、同僚との交流を通じて孤独感を解消し、精神的な安定を保つことができます。休憩時間やランチタイムでの雑談、仕事終わりの飲み会など、職場でのコミュニケーションは、ストレス解消やリフレッシュ効果も期待できます。指導・教育のしやすさ新人教育やスキルアップにおいても、オフィスワークは効果的です。対面での指導は、疑問点をすぐに解消でき、より実践的なスキルを習得できます。また、先輩社員の仕事ぶりを間近で見たり、気軽に相談したりすることで、成長を加速させることができます。テレワークでは難しいOJT(On-the-Job Training)も、オフィスワークであれば円滑に進めることができます。就労に適切な設備、環境オフィスには、仕事に必要な設備や環境が整っています。高速インターネット回線、人間工学に基づいた椅子、大型モニター、集中できる静かなスペースなど、自宅ではなかなか用意できない環境が整っています。これらの設備や環境は、集中力や生産性を高めるだけでなく、心身の健康にも良い影響を与えます。オフィスワークのデメリットオフィスワークの主なデメリットとしては、以下のようなものが考えられます。通勤時間オフィスワークでは、自宅からオフィスまでの通勤時間が発生します。通勤時間は、満員電車でのストレスや疲労、悪天候による遅延など、心身に負担をかける要因となります。また、通勤にかかる時間や費用は、従業員にとって大きな負担となる場合があります。オフィスの維持費オフィスワークでは、オフィススペースの賃料や光熱費、オフィス家具、OA機器などの維持費が必要です。これらの費用は、企業にとって大きな負担となり、特に中小企業にとっては経営を圧迫する要因となる可能性があります。また、オフィス環境を維持するための清掃やメンテナンス費用も発生するため、継続的なコスト管理が必要となります。テレワークとオフィスワークを組み合わせるメリットテレワークとオフィスワークを組み合わせることで、それぞれのメリットを活かし、デメリットを補完することができます。例えば、週に数日はオフィスに出社し、残りの日はテレワークとすることで、コミュニケーション不足を解消しつつ、柔軟な働き方も実現できます。また、従業員の多様なニーズに対応できるというメリットもあります。子育て中の従業員は、テレワークを活用することで、育児と仕事を両立しやすくなります。一方、オフィスでのコミュニケーションを重視する従業員は、オフィスワークを選択することで、より充実した仕事環境を手に入れることができます。企業は、従業員のニーズや働き方に合わせて、柔軟な働き方を選択できる環境を提供していくことが重要です。テレワークとオフィスワークを効果的に組み合わせる方法新型コロナウイルス感染症の影響で多くの企業がテレワークを導入した一方で、オフィスワークとの併用が課題となっているケースも増えています。テレワークとオフィスワークを効果的に組み合わせるには、どのような方法があるのでしょうか。ハイブリッドワークの導入テレワークとオフィスワークを組み合わせた働き方を「ハイブリッドワーク」と呼びます。ハイブリッドワークには、すべての従業員が自由に選べるパターンや、部署やチームごとにテレワークとオフィスワークの比率を決めるパターン、曜日ごとに出社・在宅を決めるパターンなど、会社やチームの状況に合わせて様々なバリエーションが検討できます。集中作業が必要な業務はテレワーク、チームでの議論が必要な業務はオフィスワークといったように、自社の業務内容や従業員のニーズに合わせて、最適なハイブリッドワークを導入しましょう。オフィス利用ルールの策定ハイブリッドワークをスムーズに進めるためには、オフィスの利用ルールを明確にすることが重要です。例えば、出社する曜日や時間帯、座席の予約方法、会議室の利用ルールなどを定めておきましょう。また、テレワーク中の連絡手段や対応時間、セキュリティ対策などもルール化しておく必要があります。オフィス利用ルールを周知徹底することで、従業員の混乱を防ぎ、円滑なコミュニケーションを促進することができます。コミュニケーションツールの活用テレワークとオフィスワークを組み合わせる場合、コミュニケーション不足が課題となることがあります。そこで、チャットツールやビデオ会議システムなどのコミュニケーションツールを積極的に活用しましょう。例えば、毎日の進捗報告や業務連絡はチャットツールで行い、チームミーティングや重要な会議はビデオ会議システムで行うといったように、ツールを使い分けることで、効率的なコミュニケーションを実現できます。オフィスデザイン・レイアウトの見直しハイブリッドワークに対応したオフィスデザイン・レイアウトも重要です。ハイブリッドワークの導入により出社率が低くなったのに合わせてフリーアドレスを導入して執務席を減らしたり、逆に増加したオンライン会議に対応するためのブース席を増やすなどの対応が必要になってきます。また、リラックスできるカフェスペースなどを設けることも、従業員の満足度向上につながり、インフォーマルなコミュニケーションをとったり、曜日を決めてチームで一緒に働いたりすることで、テレワークとチームビルディングを両立させていくことができます。テレワークとオフィスワークを組み合わせることは、企業にとっても従業員にとっても、新しい働き方を実現する上で重要な鍵となります。ここに記載した要素を効果的に組み合わせることで、柔軟性と生産性を両立させ、より良いワークライフバランスを実現することが可能になるでしょう。参考:オフィス環境の改善で生産性を向上!社員のモチベーションを高めるオフィスとは?テレワークに向いているオフィスの種類テレワークの導入によって、自宅での作業環境やコミュニケーション不足などの課題も浮上しています。こういった問題を解決するにはオフィスワークとの併用が重要ですが、テレワークに適したオフィス環境にはいくつかの種類があります。サテライトオフィスサテライトオフィスとは、企業の本社や拠点から離れた場所に設置されたオフィスのことです。サテライトオフィスは、主に以下の2つの種類に分けられます。専用型サテライトオフィス共用型サテライトオフィス自社専用のオフィススペースで、セキュリティ面や企業文化の維持に優れています。複数の企業が共同で利用するオフィススペースで、コストを抑えられます。サテライトオフィスを利用することで、従業員は自宅近くのオフィスで仕事をすることができ、通勤時間の削減や集中力向上に繋がります。また、企業はオフィススペースの削減によるコスト効率化などのメリットを得ることができます。シェアオフィス・レンタルオフィスシェアオフィスやレンタルオフィスは、オフィススペースを借りて利用する形態です。初期費用やランニングコストを抑えられ、必要な時に必要なだけスペースを確保できる柔軟性が特徴です。シェアオフィスは、複数の企業や個人が同じオフィススペースを共有する形態で、コミュニケーションやコラボレーションを促進したい場合に適しています。一方、レンタルオフィスは、個室を借りる形態で、プライバシーやセキュリティを重視したい場合に適しています。テレワークの働き方では、自宅での作業に集中できない場合や、オンライン会議用の個室が必要な場合など、状況に応じてオフィススペースを利用したいというニーズがあります。シェアオフィスやレンタルオフィスの利用は、このようなニーズに対応可能な、柔軟なオフィス環境を提供することができます。コワーキングスペースコワーキングスペースは、フリーランスやスタートアップ企業などが集まる、オープンなワークスペースです。他の利用者との交流や情報交換が活発に行われ、新しいアイデアやビジネスチャンスを生み出す場としても期待されています。コワーキングスペースは、Wi-Fiや電源、プリンターなどの設備が整っており、快適な作業環境を提供します。また、イベントやセミナーが開催されることもあり、スキルアップや人脈形成にも役立ちます。テレワークの働き方では、孤独感を感じやすいというデメリットがありますが、コワーキングスペースを利用することで、他の利用者との交流を通じて孤独感を解消し、モチベーションを維持することができます。まとめテレワークの普及により、オフィスの役割や働き方は大きく変化し、テレワークとオフィスワークを組み合わせたハイブリッドな働き方が注目されています。企業は、それぞれのメリット・デメリットを理解し、自社に最適な働き方を選択することが重要です。コミュニケーションツールやオフィス環境の整備を通じて、テレワークとオフィスワークを効果的に組み合わせることで、従業員の生産性向上やエンゲージメント向上に繋がり、時代に合った働き方を実現できるでしょう。関連記事:【完全版】オフィス移転チェックリスト!事務所移転や会社移転でやることを時系列順に解説関連記事:事務所移転時に必要な各種手続き完全マニュアル!移転の流れに沿って徹底解説