※本記事は、現時点(2024年10月現在)の情報に基づいて作成しています。手続き補助金・助成金の制度は、その内容や補助対象などが毎年変更がありますので、応募される際は改めてご確認ください※会社法の用語に合わせて、一般的には「本社」と呼ばれる拠点について、本記事では「本店」と記載しています会社の住所変更手続きの基本会社の住所変更手続きは、一見すると単純なように思えますが、実際には法的な手続きから関係各所への連絡まで、多岐にわたる作業が必要です。特に本店所在地の変更は、会社の登記情報にも関わる重要な変更となるため、慎重に進める必要があります。会社の「住所」とは?本店と支店の違い会社には「本店」と「支店」があり、それぞれに住所が定められています。「本店」は会社の登記上の住所であり、会社の代表者がいる意思決定の中枢となる場所を指します。一方で「支店」は、会社の事業・営業活動を行う拠点となる場所で、複数存在することもあります。会社の住所変更とは、これらの「本店」や「支店」の住所を変更することを指します。会社の住所変更手続きが必要なケース会社の住所変更の手続きが必要となるケースとしては、以下の様なものが挙げられます。・本店移転:会社の登記上の住所である本店を別の場所に移動する場合が該当します。会社の重要な意思決定を行う場所が変わるため、登記変更や各種届出が必要となります・支店移転:会社の事業を行う場所である支店を別の場所に移動する場合が該当します。本店所在地の変更と比べて手続きは簡略化されますが、必要な届出はあります。・代表者住所変更:会社の代表者の住所が変更になった場合に該当します。会社の登記情報にも関わるため、登記変更が必要です。上記以外にも、会社の合併や分割、商号変更など、会社に関する重要な変更があった場合にも会社住所変更の手続きが必要になる場合があります。会社の住所変更に伴う登記手続き登記手続きとは?会社住所変更に伴い、必ず行うべき手続きが登記手続きです。登記手続きとは、会社に関する重要な事項を、法務局に登録することを指します。登記手続きを行うことで、会社に関する情報を公示することができ、取引相手や関係機関に対して、会社の変更内容を明確にすることができます。会社の信用性を維持するためにも、登記手続きは正確かつ迅速に行う必要があります。会社住所変更の登記手続きは、本店移転、支店移転、代表者住所変更のいずれの場合も必要となります。登記手続きには、以下の書類が必要となります。・登記申請書:会社住所変更の登記申請を行うための書類です。法務局のホームページからダウンロードできます。・定款:会社の設立時に作成した定款です。本店移転の場合は、定款変更の手続きが必要となる場合があります。・登記済証:会社が登記されていることを証明する書類です。・印鑑証明書:会社の代表者の印鑑が登録されていることを証明する書類です。・その他必要書類:状況に応じて、追加で書類が必要となる場合があります。登記申請書には、会社名、変更前の住所、変更後の住所、変更内容など、必要な情報を正確に記入する必要があります。また、登記申請書には、会社の代表者が署名・押印する必要があります。本店移転の登記手続き本店移転の登記手続きは、主に以下のような流れで行われます。1.株主総会の決議: 株主総会を開催し、本店移転について決議を行います。2.取締役会の決議: 取締役会を開催し、本店移転について決議を行います。3.登記申請書類の作成: 本店移転登記申請書、株主総会議事録、取締役会議事録などの必要書類を作成します。4.法務局への申請: 作成した書類を管轄の法務局に提出します。5.登記完了: 法務局の審査を経て、登記が完了します。本店移転後は定款の変更も必要本店移転の場合、登記申請書の他に、定款変更の手続きが必要となる場合があります。定款変更が必要となるケースは以下の通りです。・定款に本店所在地が記載されている場合・定款に本店所在地に関する条項があり、本店移転に伴い変更が必要となる場合また、定款変更の手続きには、以下の書類が必要となります。・定款変更議事録:定款変更の内容を議事録にまとめたものです。・定款変更登記申請書:定款変更を法務局に申請するための書類です。定款変更議事録は、会社の取締役会や株主総会などで作成されます。定款変更登記申請書は、定款変更議事録と共に、法務局に提出し、定款変更の手続きが完了すると、新しい定款が発行されます。新しい定款は、会社の登記簿に登録され、会社に関する重要な情報として公示されます。定款変更の手続きは、会社の規模や組織によって異なり、取締役会や株主総会での議決が必要になる場合もあります。特に本店移転に伴う定款変更は、会社の組織や運営に大きな影響を与えるため、事前に専門家(弁護士や司法書士)に相談しながら、慎重に進めることをお勧めします。代表者住所変更の登記手続き代表者住所変更の登記手続きは、決議等が不要なため本店移転の登記手続きよりは簡易なものとなりますが、以下のような流れで申請を行う必要があります。1.登記申請書類の作成:代表者事項変更登記申請書、代表者の住民票などの必要書類を作成します。2.法務局への申請:作成した書類を管轄の法務局に提出します。3.登記完了:法務局の審査を経て、登記が完了します。また、代表者住所変更の場合には、登記申請書の他に、代表者の印鑑証明書が必要となります。代表者の印鑑証明書は、市区町村役場で取得できますので、早めに取得をしておきましょう。会社の住所変更手続きに関わる届出先会社住所変更に伴い、登記手続き以外にも、税務署、都道府県税事務所、市区町村役場など、様々な機関への届出が必要となります。これらの手続きを漏れなく行うことで、会社がスムーズに新しい住所で活動を続けられるようになります。税務署会社住所変更の際には、管轄の税務署に「異動届出書」を提出する必要があります。この届出書には、変更前の住所、変更後の住所、変更年月日などを記入します。提出期限は、移転による住所変更日から1か月以内です。他にも、会社住所変更の際には、「納税地の異動に関する届出書」や「給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書」が必要となる場合もあります。これらの届出書は、管轄の税務署や給与支払い事務所が変わる場合に必要となりますので、提出の必要有無について不安な場合は、事前に税務署に問い合わせて確認することをお勧めします。これらの住所変更に伴う税務署への手続きを怠ると、税務上の不利益を被る可能性があります。例えば、税務調査が行われた際に、住所変更の届出がされていないことが判明すると、ペナルティを課せられる可能性があります。また、税務上の優遇措置を受けられなくなる場合もありますので、手続きの漏れが無いようにしっかりと準備をしておきましょう。都道府県税事務所都道府県税事務所には、法人事業税、自動車税などの都道府県税に関する住所変更の届出が必要です。都道府県税事務所の管轄は、会社の所在地によって異なります。納税地が都道府県をまたいで変更になる場合には、現在の都道府県税事務所だけでなく、移転後に管轄となる都道府県税事務所でも手続きを行いましょう。提出期限は、移転による住所変更日から1か月以内です。市区町村役場市区町村役場には、住民税・固定資産税などの市区町村税に関する住所変更の届出が必要です。市区町村役場の管轄は、都道府県税事務所と同様に会社の所在地によって異なります。提出期限は、移転による住所変更日から1か月以内です。年金事務所会社住所変更の際には、従業員が加入している年金事務所に「適用事務所所在地、名称変更届」を提出する必要があります。この手続きにより、社会保険料の納付先や保険給付に 関する手続きなどが、新しい年金事務所で行われるようになり、会社住所変更の内容によっては、別の年金事務所に移管される場合もあります。提出期限は、移転による住所変更日から5日以内です。労働基準監督署会社住所変更の際には、管轄の労働基準監督署に「労働保険関係成立届」「労災保険年度更新申告書」を提出する必要があります。労働基準監督署への届け出を怠ると、労働基準法違反となる可能性があります。提出は本店移転の翌日から10日以内に必要です。・労働保険関係成立届:労働保険関係成立届とは、事業主が労働者を一人でも雇用し、労働保険の適用事業となった際に、所轄の労働基準監督署または公共職業安定所(ハローワーク)に提出する書類です。・労災保険年度更新申告書:労災保険年度更新申告書とは、毎年6月3日から7月10日までの間に、事業主が前年度(4月1日から翌年3月31日まで)の労働保険料(労災保険と雇用保険)の確定額を計算し、申告・納付するために提出する書類です。ハローワーク会社住所変更の際には、管轄のハローワークに「雇用保険適用事業所各種変更届」を提出する必要があります。提出は本店移転の翌日から10日以内に必要です。ハローワークへの届け出を怠ると、就職活動中の求職者への情報提供が滞る可能性があるため、注意が必要です。雇用保険適用事業所各種変更届:雇用保険適用事業所各種変更届とは、事業主の氏名や住所、事業所の名称や所在地、事業の種類など、雇用保険の適用事業所に変更があった場合に、ハローワークに提出する書類です。その他上記以外でも、会社住所変更に伴い、消防署や警察署への届出が必要となる場合があります。・消防署: 防火対象物を使用している場合、所在地の変更届出が必要です。・警察署: 古物商許可を取得している場合、営業所の所在地の変更届出が必要です。これらの機関への届け出は、会社住所変更の登記手続きが完了した後に行うのが一般的です。民間機関への住所変更も忘れずに会社の住所変更に伴い、登記手続きや各種届け出以外にも、様々な民間機関への会社住所変更の手続きが必要となります。これらの手続きを漏れなく行うことで、会社がスムーズに新しい住所で活動を続けられるようになります。銀行口座・クレジットカード情報の変更会社が使用する銀行口座やクレジットカードの住所情報を、変更後の住所に変更する必要があります。これらの情報を変更しないと、口座振替や請求書が届かなくなる可能性があります。会社の住所変更手続きは、各金融機関の窓口やウェブサイトで行うことができますが、手続きに必要な書類や期間は金融機関によって異なるため、事前に確認しておきましょう。郵便物転送手続き郵便物を新しい住所に転送してもらうためには、郵便局で転送手続きを行う必要があります。転送手続きは、郵便局のホームページからオンラインで申し込むこともできます。郵便物転送サービスには、転送期間が設定されている場合があります。転送期間が過ぎると、郵便物は元の住所に返送されます。転送期間が過ぎないように、定期的に期間を確認するようにしておきましょう。電話・インターネット回線の移転手続き会社で使用している電話やインターネット回線を、新しいオフィスに移転する必要があります。移転の手続きは、電話会社やインターネット回線会社によって異なります。移転の手続きには、電話番号や回線種別の変更、工事の予約などが必要となります。移転時期に合わせて、余裕を持って手続きを始めましょう。会社住所変更に伴うその他の変更手続き最後に、官公庁・民間機関に対する会社住所変更手続き以外の、事業運営上の手続きについても確認しておきましょう。これらの手続きを漏れなく行うことで、会社がスムーズに新しい住所で活動を続けられるようになります。従業員への周知従業員には、会社住所変更の情報を周知する必要があります。周知方法は、社内メール、掲示、会議など、様々な方法があります。従業員が新しい住所を把握し、業務に支障が出ないように、適切な方法を選びましょう。名刺やメールの署名、会社情報の記述変更等会社住所変更に伴い、名刺、メールの署名、会社ホームページや社内資料などに記載されている会社住所を変更する必要があります。これらの情報を変更しなかった場合、社外関係者や従業員に誤った情報が伝わってしまう可能性があるので、早めに準備をしておきましょう。取引先や顧客への案内取引先や顧客には、会社住所変更の案内を行う必要があります。案内方法は、電話、メール、書面など、様々な方法があります。取引先との関係性や規模などを考慮して、適切な方法を選びましょう。取引先や顧客への案内は、会社住所変更の登記手続きが完了した後に行うのが一般的です。ただし、取引先によっては、登記手続きが完了する前に案内を求める場合もありますので、事前に確認しておきましょう。会社の住所変更手続きで困った場合の相談窓口会社の住所変更手続きは、法令や手続き方法など、複雑な要素が絡み合います。手続きに不安がある場合や、不明な点がある場合は、専門家に相談することをお勧めします。法務局法務局は、会社登記に関する専門機関です。会社住所変更の登記手続きについて相談することができ、登記申請書の書き方や提出方法などのアドバイスも受けることができます。また、登記手続きに関する書類の提出期限や必要な書類などの情報も提供しているので、住所変更の計画が立ったタイミングで、早めに相談しておきましょう。税務署税務署は、税金に関する専門機関です。会社住所変更に伴う税務に関する手続きについて相談することができ、税務上の届出や申告の仕方などのアドバイスも受けることができます。また、税務に関する書類の提出期限や必要な書類などの情報も提供しています。税金に関する手続きは複雑になりやすいため、不安がある場合は都度相談するようにしましょう。その他の専門家への相談(司法書士・税理士など)会社住所変更の手続きは、登記、税務、その他の様々な分野にわたります。手続きが複雑で、専門知識が必要な場合は、司法書士や税理士などの専門家に相談するのがおすすめです。司法書士は登記手続きの専門家であり、税理士は税務に関する専門家です。これらの各領域の専門家に相談することで、手続きをスムーズに進めることができ、トラブルを回避することができます。まとめ:漏れなく手続きを進めるために会社住所変更は、登記手続き、税務関係の届出、取引先への連絡など、様々な手続きが必要となります。万一申請や書類の内容不備があった場合、ビジネスに大きな影響をあたえるリスクもありますので、移転プロジェクトを成功させるためには、早めの準備と丁寧な手続きが大切です。また、不明な点がある場合には、オフィス移転に詳しい専門家に相談することをお勧めします。まずはこの記事で紹介した内容を参考に、会社の住所変更に伴う手続きを正確に把握し、住所変更に際して漏れなくスムーズに手続きを行えるよう、準備を進めましょう。関連記事:【完全版】オフィス移転チェックリスト!事務所移転や会社移転でやることを時系列順に解説関連記事:事務所移転時に必要な各種手続き完全マニュアル!移転の流れに沿って徹底解説